読書メモ:『スマホ時代の哲学』

 

孤独・孤立・寂しさの3つ言葉を使い分けることでスマホによった失われたもの/増えたものを論じていた。接続過剰の時代に自分と向き合う孤独の時間を持つことの重要性を述べていて、それを色々と言い換えながら丁寧に書いていたと思う。
「自分と向き合う」といっても大事なのは自分の中に複数の声を持つことで、そのためにも自分の中に閉じたり、安易に自分の頭で考えたり心の声に従う(複数の声を無視する)ことに警鐘を鳴らしていた。

孤独の時間を持つための方法として、「何かを作る趣味」を推奨していた。自分の身から外部に何かを作ることを通して自分自身との対話ができるとのこと。スマホ時代の弊害とそれに対抗する提案は妥当だなと思ったけど、具体的にどのような「趣味」がいいのか、どうやってその時間・体力・気力を捻出すればいいのかと思ったけど、まぁそれは読者自身が考えないといけないんだろうなと思った。

要するに、他者はノイズではないし、自分の心の声を聞いたとしても、複数の答えが返ってきて当然なのです。ジョブズの助言に素直に従おうとすると、こうした事情を無視して、自分の多様性を抑圧しかねません。いろいろな植物や樹木があったはずの庭を、単一の植物を育てる場所であるかのように捉えてしまいかねないわけです。 p226

自分自身への過剰な関心は、自分の中にあるたくさんの声を押し殺して、自分の中にある対立や矛盾をなかったことにして、「今の自分が自分の声だと思っているもの」を増幅させかねません。自己啓発の論理も、自己責任化する社会も、こうした流れを加速させる手伝いばかりしています。 p235

これまでの言葉を使うなら、「何か足りない」という気分は、「モヤモヤ」「消化しきれなさ」「難しさ」「かみ砕きにくさ」に取り込んでいないことからくる不安にほかなりません。 p255