読書メモ:『ルカ・モドリッチ自伝』

ロシアW杯で準優勝し、2018年にバロンドールをとったところまでの自伝。「ベリンガム・システム」をはじめチームの新陳代謝を図ってか、今シーズンはマドリーでの先発機会が減っているモドリッチ。これでは今シーズン最後まで在籍するかわからないし、今のうちに彼のことをもっとよく知っておいた方がいいなと思って読んだ次第。大ベテランのレジェンドだけど意外と自分と年齢が近くて、フランス大会とか同時代感のある話題が多かった。東欧の小さな国の小さな村から次第に大きな世界へ、そしてサッカー界の頂点に上り詰める過程は実にワクワクするもので、まるで漫画のようだった。

モドリッチの才能や努力、上昇志向については凄すぎてどうにも語れないけど、印象的なのは幼少期に家族から受けた愛情と応援、そして自分で築いた家族との絆が彼にどれだけ強い力を与えているかということだった。一昔前の児童文学にでてきそうな父と子の絆を感じる。今やってる朝ドラ「ブギウギ」のヒロインもだけど、幼少期に親や周囲の大人に信頼された子は自信を持ってやりたいことにトライできるのだろうなと思った。

……父さんは「偉大な選手になる才能をルカは持っている」と確言していた。だから、誰も父さんを説き伏せられなかったんだ。実際には、母さんの賛同が父さんには重要だった。二人はサッカー好きの僕にすべてを順応させることに決めたんだ。当時はそれがどれだけ大胆な決断で、どれだけの犠牲を両親が払ったのかを今になって理解できるんだよ。
p47

当時の自分が大人だったとは言えないけど、ドマゴイの死は深く心に刻まれ、成熟の速度を早める結果となった。彼が教えてくれた「責任感を持つこと」「ルールを尊重すること」「義務を遂行すること」「不条理にどう耐えるか」「できる気がしない時はどうすればいいか」といったすべての指導が、僕の人生観において有意義になった。あらゆる危機に陥った時、彼の言葉を思い出しては我を取り戻すんだ。
p54

「私にとって一番大事なことは、ルカが満足することだ!」
僕がアドバイスを求める時にも父さんの態度は変わらない。自分の意見を言ったのちにこう加えるんだ。
「息子よ、いつも自分が正しい決定を下していると信じるんだよ」
p76