読書メモ:『チャンピオンズリーグ・クロニクル』

チャンピオンズリーグ(CL)のグループステージがはじまっている。時間が足りないのでグループステージはYoutubeでハイライトだけみている。スペイン勢はセビージャ以外は順調に勝っているようだ。とはいえバルサポルト戦で危ないシーンがあったし(オフサイドだったけど見事なオーバーヘッドをくらった)ガビはレッドカードもらったけど……

そんなことで『チャンピオンズリーグ・クロニクル 「サッカー最高峰の舞台」がたどった激動の四半世紀』を読んだ。CLのはじまりから2018年までをまとめた本で、CLの前身の大会まで扱っているし各リーグ・各クラブがCLに受けた影響もわかるから、これを読めばCLだけでなく欧州サッカーの歴史をある程度理解できると思う。本書は2012年の『チャンピオンズリーグの20年 サッカー最高峰の舞台はいかに進化してきたか』の増補版で、500ページ近いボリュームがあるけど、自分は欧州サッカー初心者なので読んで色々と勉強になった。ボスマン判決(契約満了に伴う違約金なしの移籍と外国人枠の撤廃)と最近のエンバペ騒動とか、UEFA会長プラニティが掲げた公約の一つ「判定へのテクノロジー導入拒否 p226」とVAR判定の導入とか、当時の事件や考えが現在にどう影響している・していないかを考えることができた。

サッカーが地域のクラブスポーツからグローバル規模のエンターテイメントになった契機として衛星放送があげられていた。放映権の扱いは国によって差があって、その差がリーグの収益に差を生んで今のプレミアリーグの繁栄につながっているというのが興味深かった、(国単位の経済状況も大きな要因の一つ)。今はネット放送が主流になったけど、衛星放送の時とは違うのだろうか。ただ格差の拡大にしかつながらなかったのか。

CLフォーマットはスポーツの論理とビジネスの論理の綱引きによって調整されていて、でもだんだんビジネスの力が強くなっていく(そしてそのカウンターとしてのプラニティの登場)。それはサッカーに限らずどの世界でもそうだし、自分もグローバル展開したからこそCLを見るわけで、なかなか評価が難しいですね。

面白い箇所はたくさんあったけど、まとまらないので一つだけあげておくと、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー規則)を設けた経緯の一つにクラブで選手を育成することを目指していたというのがあった。そこでバルサカンテラは評価されていて、たしかにメッシはいうまでもなく最近はヤマルが出てきたようにカンテラ出身の選手は応援したくなるし、移籍市場のお金の動きは正直見ていてどうなんだと思うところもあるので、理想論でも選手育成を志向する姿勢は大事だと思う。とはいえ『バルサ・コンプレックス』では選手育成の難しさ(クラブが意図して育成できるものでもない)が書いてあったな……

UEFAFFPを導入したさらにもうひとつの狙いも、実はそこにあった。FFPの審査基準には「育成部門への投資、およびクラブ施設への投資は、支出とみなさず別会計とする」と明記されている。目先の勝利のための補強という短期的な投資ではなく、育成や施設の充実という長期的な視点に立った投資を促進する、言ってみれば「買う」よりも「育てる」方にインセンティブを与えることで、クラブの足腰を強めて安定した経営基盤を確立させ、ひいては欧州サッカー界全体の健全な発展につなげようというわけだ。
P299-300

バルセロナが自らを「単なるクラブ以上の存在」と位置づけていることはよく知られている。しかしそれまでのバルセロナは、他のメガクラブと同様カネに物を言わせてスター選手を買い漁る金満クラブとしての側面の方が強かった。クライフがクラブを離れた90年代半ば以降は、監督、選手が1、2年単位でころころ入れ替わる、浮き沈みの激しい時代が続いた。その後ラポルタ会長の下で持ち直し、CLを制覇した05-06ですら、決勝のスターター11人中、生え抜きはバルデスプジョルの2人でしかなかった。
そうした流れと一線を画して、このクラブが持つ最大の財産であるカンテラ(育成部門)が育てた生え抜きを重視するチーム作りを進め、ボールポゼッションに最大の価値を置いた理想主義的な攻撃サッカーを徹底するという、いわば「原点回帰」を大胆に推し進めたのは、ほかでもないグアルディオラだった。
P250-252

2024-2025のCLが分水嶺になると著者は書いていて、最近のニュースでは出場枠を有力クラブ・リーグに配慮したものになっているとのことだ。どうなるのかな。

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