読書メモ:『フィンランドは今日も平常運転』

よんたび文庫は『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』以来2冊目。海外エッセイを読んで旅行気分を味わいたかった。

25個くらいの小話が収録されていて、どれも短いので読みやすい。けど、個人的にはもう少しひとつひとつが長いものが読みたい気分だった。例えば「トムの大冒険」ではトムという個人の驚きの経歴を紹介して終わってしまった。たしかにすごい人ではあった。

筆者はフィンランド人と結婚してフィンランドで暮らしている。フィンランドの人はパーソナルスペースが広かったり、離婚率が高かったり(別居、離婚の小話がいくつか収録されている)、離婚しても共同親権も持つことが一般的だとか、知らないことが多かった。

一番気に入った小話は「フィンランドのキラキラ女子ロッタ」。知り合ったばかりの女性ロッタに筆者が誘われてに散歩をする話で、散歩しながら互いの話をするうちに打ち解けていく。季節は冬(マイナス十五度)で、菓子パンと持ってきた紅茶で一休みするシーンが良かった。豊かな時間だと思った。自分もやって見たいと思った。

筆者はフィンランドに長く住んでいるようで、フィンランドを見る目は冷静だ。フィンランド人といっても一括りにできないという視点が通底しているし、移住者としての警戒心もある。そういった意味で、本書はフィンランドに行きたい!とときめくタイプの本ではないかもしれない。もちろんフィンランドの文化を知ったり驚きもあるけど、ベースとしてはフィンランドに住む人々の日常を淡々と綴った本で、まさに平常運転。思ってたのと違ったけど「平熱のフィンランド」を知れて良かった。